茨城県行方市

 東は北浦、西は霞ヶ浦と二つの広い湖に挟まれた自然豊かな行方(なめがた)市は、2005年に麻生町・玉造町・北浦町が合併し発足しました。
子育てしやすい地域を目標に掲げる行方市では、母子健康手帳の交付を受けた方を対象に、市長からのメッセージと共にモーハウスのギフトカタログがプレゼントされています。
鈴木周也市長と、授乳服を上手に活用しながら幼稚園児を筆頭に3人の子育て中の野口ゆかりさん(行方市)に対談をしていただきました。

●3人目で授乳服に出会う

――野口さんは3人目にして初めて授乳服プレゼントを受けたそうですね。

野口さん(以下、敬称略) そうなんです! 2人目(さくらちゃん・2歳7カ月)出産直後にこの制度が始まったので、間に合わず残念に思っていました。3人目(ちひろちゃん・4カ月)で初めて授乳用ブラジャーと授乳服をいただいて、とてもうれしかったです(笑)
母乳で育てる身としては、赤ちゃんがおっぱいを欲しがるときに、さっと授乳できるのが一番助かります。すごく感激しました!

鈴木市長(以下、市長) それはうれしいですね。そういう言葉を聞くと、この事業をやってよかったと思います(笑) 上のお子さんのときには、どのように授乳していたのですか?

野口 授乳にはケープを使っていました。ケープでは、赤ちゃんの顔がなかなか見えないのが不安でしたね。

市長 赤ちゃんの様子が見えることは、ママの安心感にもつながりそうですね。

野口 はい。それと、子どもが3人ともなると外出時の荷物がどんどん増えていくのですが、授乳服を着るようになってからは余計な荷物がなくなったので、外出先での負担も減りました。

市長 うちも子どもが3人いるので、子どもの人数が増えるたびに外出の際の荷物が多くなるのはよくわかります(笑)  外出先での行動は何か変わりましたか?

野口 みんなで外食をしているときに授乳のために席を外す必要がないので、気持ちがらくですね。授乳室を事前に探さなくても済みますし、好きな席に座れます。

市長 今までは外出の際には、常に授乳室を探さなければならないという手間があったわけですね?

野口 はい。ショッピングモールでは、赤ちゃん用品売り場に授乳室が併設されているところが多いのですが、レストランやフードコートで食事をしている途中で泣かれたら、遠い授乳室まで行くのか…と考えると負担に感じていました。授乳服を着る生活になってからは、授乳室がない地元のお店にも気軽に行けるようになりました。

市長 店側も授乳室用のスペースを確保することが難しい場合もあるので、お店にとってもいいですね。授乳服を着ることで、行動の制限がかなりなくなったようですね。

野口 はい、上の子が大好きな回転寿司にも行けます(笑)。おむつを交換できる場所はあっても、授乳室がない回転寿司が多いので。上の子にも我慢させなくていいのは助かります。幼稚園の運動会やお遊戯会を見に行くときも、赤ちゃんが泣きだしたらどうしよう?といった不安もありません。

市長 精神的に慌てなくて済むことで、お母さんのストレスはだいぶ軽くなりそうですね。
それにしても、ちひろちゃんもさくらちゃんも、お出かけに慣れているせいか、とってもニコニコしていて人慣れしていますね(笑)

●授乳服は生活の一部

――授乳服を着ることで、毎日の生活で変わったことはありますか?

野口 授乳服を着ることで効率よく子育てができるようになったと思います。上の子たちのお世話もあるので、時短になるのはありがたいですね。
まず、毎日、授乳服を着ているので、服選びに迷うことがなくなりました。授乳服はすでに生活の一部です。お洒落でバリエーションも豊富なので、気持ちも自然と上がります。それに、赤ちゃんが泣いたら、イスがあれば座って授乳すればいいし、いざとなれば歩きながらもできます(笑)

市長 ええっ、歩きながらですか! それはびっくりしました(笑) 

野口 3人目なので、上の子たちの様子を見ながら、片手でさっと授乳できるのも助かります。食事のときも、ちひろがおっぱいを欲しがったら、授乳しながら、自分も上の子どもたちと一緒にごはんを食べられます。生活のなかで、“ながら授乳”の場面が結構ありますね。授乳しながら、上の子を遊ばせることができますし。

市長 “ながら授乳”は想像していませんでした! 私の想定を超えていましたね(笑)

野口 夜も、横になって添え乳で授乳しながら上の子を寝かせつけさせています。とくに授乳服は寝かせつけに最強です! 添え乳がだいぶらくになりました。
(ここで、ちひろちゃんが少し泣きかけたので、野口さんがさっと授乳。片手では、さくらちゃんをあやしています)

市長 授乳服での授乳は、授乳しているという感じがまったくしないですね。抱っこしているように見えるだけで、生活の風景に溶け込んでいます。それに、お母さんの片手があいている、この光景が驚きです。

野口 三世代同居で、家のなかにじいちゃんがいたりすると、授乳はちょっと恥ずかしいですよね。違う部屋にわざわざ授乳に行くと、上の子も一緒について来ちゃいますし。赤ちゃんの授乳は待ったなしなので、同じ部屋にじいちゃんがいてもすぐあげられます(笑)

市長 実は、行方市は三世代家族が茨城県内で2番目に多い自治体です。三世代同居でも、家族の前でストレスなく授乳できるのはいいですね。

●災害対策にもなる授乳服

――自然災害の多い日本で、赤ちゃんがいる家庭の災害対策としても、今、授乳服が注目されています。

市長 昨年は、市内でも台風被害に見舞われる地域が多く、避難所を開設することもありました。小さいお子さんがいるご家庭だと、子どもが迷惑かけるから、授乳できないからという理由で避難所には行かずに車で避難生活を送るケースがみられます。
車中避難で何よりも怖いのは、エコノミークラス症候群※です。
車中避難を避けるためにも、お母さんも赤ちゃんも普段から外に出て、近所の人とつながることができていれば、避難所に足が向くのではないかと思います。

――授乳服は、災害にも強いお母さん、赤ちゃんを育てているといえるかもしれませんね。市長 確かに授乳服はいざというときの災害時にも役立ちますね。これも想定外でした(笑) 

――最後に、授乳服プレゼントを通して、市長はどのようなまちづくりをお考えでしょうか?

市長 人口減少・少子高齢化は、どこの自治体にとっても大きな課題です。子育て世帯をいかに支援していくかが鍵となっています。子育て支援というと建物などのハード面を考えがちですが、ソフトの面でできることとして授乳服プレゼントを始めました。
野口さんのお話を伺っても、子育て中のお母さんの毎日には、ご自身でも気づかないような負荷がかかっていると感じました。その負荷を取り除き、子育てがらくにできるように環境を整え、子育てしやすいまちにしていきたいですね。
普段から赤ちゃんを連れて、楽しく生活ができていることもお母さんの自信につながると思います。

――モーハウスの光畑代表も、「赤ちゃんを連れて出かけることは社会貢献」とよく話しています。
市長 ぜひ授乳服を着て、赤ちゃんをどんどん地域にお披露目していただきたいですね。
『赤ちゃんってかわいいな、子育てって楽しそう…』という人が増えれば地域も元気になり、地方でもらくに子育てできる環境がつくれることが実証できると思います。

※エコノミークラス症候群
食事や水分を十分に取らない状態で、長時間、車中等の狭い空間で足を動かさないことで血行不良が起こり、血液が固まりやすくなる。その結果、血栓が肺に詰まって肺塞栓などを誘発する恐れがある。