働く母乳対談!『おっぱいとだっこ』再出版記念トークショー part3

母乳育児は防災につながります

ここ数年、日本各地で地震や大きな水害が発生しています。
ライフラインが断たれた時、また、避難所で生活するとなった時、母乳育児そのものが防災につながります。

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2016年10月7日『おっぱいとだっこ』の再出版を記念して、
モーハウス青山ショップにてトークショーが行われました。

トークショーのテーマ:おっぱいとだっこと授乳服

母乳110番 竹中恭子さん
産婦人科医 村上麻里さん
モーハウス 光畑由佳

 

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体一つあれば赤ちゃんを助けられる

光畑 災害の多い国日本。熊本の震災の際にも、これまでの災害の教訓が生かされた部分もありましたが、災害弱者である幼い子のいる母親はやはり大変だったそうですね。

竹中恭子さん(以下敬称略)  私が鎌倉のペンクラブ会員だった時期、災害時に、会員の先生たちが所蔵の骨とう品や作品を売って被災地へミルクを送ったことがありました。
鎌倉という土地柄もあって結構なお金が集まったんですが、私はそこで、母乳育児の支援の大切さをうまく訴えることができなくて悔しい思いをしたんです。

光畑 被災地からするとミルク缶だけ送られてもどうしようもない。
母乳はお母さんの体ひとつあればいいですが、ミルクだとまずお湯が必要。殺菌のために調乳は80度以上のお湯でして、冷まして飲ませるという手間もかかります。
燃料も時間も必要で、すごく大変なんですよね。

村上麻里さん(以下敬称略) 私の友人のお母さまは宮城県に住んでいるのですが、東日本大震災の時、ビルの屋上にひと晩閉じ込められてしまって。
そこに赤ちゃん連れの若いお母さんもいたんですね。赤ちゃんにあげるものがない、寒いし、どうしましょうと思いました。
さいわい母乳育児をされていたので、赤ちゃんは抱っこされておっぱいを飲んで、泣かずに過ごせたそうです。
それを見ていたお母さまは、それまで「どうして母乳にこだわるのよ。ミルクでもいいじゃない」という意見だったのが「母乳で良かった」って実感され、母乳推進派になりました。
お湯もミルクも無い状況では、まさに命綱ですね。

おっぱいは急には出ない

光畑 東日本大震災の時被災したある町の副市長が当時女性で、彼女は道路が封鎖されて電車も来なかった数日間、一番怖かったのは、赤ちゃんが死んでしまうのではないか、ということだったそうです。確かに、ミルクだと必要なものが揃わないとあげられないので。だからといって母乳はその時だけ急に出そうと思っても出ません。今までミルクだったものを、「地震が来たから母乳出すぞ」といっても、そうはいかない。だから、普段から母乳育児をしていると防災になるのです。

村上 持ち運ぶ道具もいらない、お母さん自身がそのまま赤ちゃんのお弁当ですから。

竹中 その通りです。だからお母さんだけで頑張るのではなく、周りのお父さん、おじいちゃんおばあちゃんも、普段から母乳育児をしようとするお母さんを支えてあげてほしいと思います。自分がおっぱいを出すことができなくても、お母さんが気持ちよく授乳できるように、家事その他の実働はもちろん、あたたかく見守るなど、色々な面から支援できるような仕組みになればと思います。

 

災害時には授乳服を

竹中 光畑さんは授乳服を被災地に届ける活動を進めていましたよね。

光畑 長岡の震災からの活動で、今回も基金をつけたアイテムを販売しその基金を使ってお届けしました。
その基金付きのアイテムが「授乳十二体絵図手ぬぐい」で、これを買っていただいたお金で届けるという仕組みを東日本大震災から続けています。

 

災害の際の支援チャリティで販売している手ぬぐい

 

村上 避難所で授乳できる場所まで考えてくれることは少ないので、それは助かりますね。
光畑 母乳をあげてほしいけれども、その場で胸を出してあげるということは危険もある。被災地はみなさんストレスがたまっているので、何がスイッチになるかわかりません。とはいえ、プライバシーを保つ女性のスペースを作って、そこに毎回授乳しに行くというのも、夜中に泣いてる赤ちゃんを連れていくのは難しいですし、そのスペースで授乳しているというのが他の人にわかること自体が性犯罪を誘発することもあると専門の方に伺いました。

竹中 だからごく普通に、生活の延長上にある安心として、授乳時に胸が見えない服があったらいいのに、というのが、私が災害時に一番感じたことです。

光畑 そうですね、安全面からも、授乳服が一枚あるだけでお母さんも安心して授乳できると思います。普段から使うことで災害時に役立つ。防災の基本になっていますよね。それは育児にもつながっていますね。

 

次回は最終回。part4も、お楽しみに。
(part1、part2の内容は、こちらから → http://mo-house.net/13771-1/ )

写真撮影:吉永陽一

竹中 恭子さんプロフィール

「母乳110 番」代表。イラストレーター、ライター、まんが家と多彩な活躍の場を持つ。1992 年に育児サークル「よこはま自然育児の会」の有志らと無料電話相談ボランティア「母乳110 番」を開設。沢山の絵やまんがを盛り込み相談内容をまとめた『おっぱいとだっこ』が第9 回ライターズネットワーク大賞を受賞。現在も電話相談員をつとめる。

 

村上麻里さんプロフィール

新潟大学医学部卒業。新潟大学医学部付属病院、市立甲府病院、刈羽郡総合病院、県立がんセンター新潟病院など、関連病院勤務を経て結婚後、東京都内の産婦人科クリニックで勤務。多忙な勤務医として働きながら三姉妹を母乳で育てた経験を持つ。産婦人科専門医。母乳110番顧問。

 

 

『おっぱいとだっこ』

著作:竹中恭子

監修:村上麻里

出版社:PHP研究所(2016/10/28)

http://bookstore.yahoo.co.jp/shoshi-675344/

 

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モーハウスの手ぬぐい基金は、通常は母乳育児を応援するイベント活動基金として、災害時には被災地支援のチャリティーとして積み立てられています。

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