自分を愛でれば愛でるほど、母性は輝く

 

小野美智代さん

小野美智代さん

*プロフィール*

小野美智代(おの・みちよ) ブログ

1974年、静岡県生まれ。お茶の水女子大学大学院在学中に立教大のジェンダーフォーラムに勤務。2003年に発展途上国を中心に世界中の女性が、産む、産まない、また何人産むかを自ら選択でき、安心して子どもを出産できるように取り組む国際協力NGOジョイセフ(JOICFP)へ。現在、市民社会連携グループディレクター。静岡県三島市在住&新幹線通勤、同い年の夫と事実婚(別姓)歴10年。ママ歴7年(小1、0歳の二女の母)。誕生学アドバイザー、ランニングアドバイザー、GMNコアメンバー。

 

ジョイセフ(公益財団法人)

途上国の妊産婦と女性の命と健康を守るために活動している日本生まれの国際協力NGO。戦後の日本が実践してきた家族計画・母子保健の分野での経験やノウハウを途上国に移転してほしいという国際的な要望を受け、1968年に設立。国連、国際機関、現地NGOや地域住民と連携し、アジアやアフリカで、保健分野の人材養成、物資支援、プロジェクトを通して生活向上等の支援を行っている。2011年3月の東日本大震災以降は、東北の妊産婦・女性支援も実施。

 

 

 

仕事にも子育てにも前向きな女性たちから刺激を受けて、妊娠!?

 

 

光畑:小野さんが所属するジョイセフは発展途上国の「リプロダクティブヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)」を支援しているNGO。女性支援のスタンスがモーハウスととても近いものを感じています。青山ショップオープン当時からのつながりもあり、東日本大震災では、被災地で心細い思いをしているお母さんたちにジョイセフと日本助産師会を通じて、モーハウスの授乳服を届けていただきました。

 

小野:そうでしたね。私が最初にモーハウスを知ったのは、2005年の「愛・地球博」の授乳ショーだったと思います。その後、2007年の横浜の母の日イベントでも授乳ショーでモーハウススタッフの皆さんやバースコーディネーターの大葉ナナコさんたちに出会って。

 

光畑:そのときは、出産前でしたか?

 

小野:はい。仕事と子育ての両立に自信が持てずに「いつか産みたい。でも、まだそのときではない」と。でも、2007年の母の日イベントが転機でしたね。5人の子育てをしながらハツラツと輝いている大葉ナナコさんや、子育てにも仕事にも前向きで楽しんでいる女性たちと話すうちに不安のスイッチが外されて「今が産みどきかも」と、スーッと気がラクになったことを覚えています。それから、わずか3カ月後に第1子を妊娠!(笑)

 

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光畑:子育ての不安や気構えを、ロールモデルとなる先輩ママたちが「大丈夫よ~」とはずしてくれたのかもしれませんね。モーハウスのショップやイベントは、妊娠のパワースポットとよく言われます(笑)。出産はいかがでしたか?

 

小野:出産は夫と一緒にフリースタイルで産みたいと、地元静岡の助産院に。そこで、身を持って日本の助産師さんたちの高い技術ときめ細やかなケアを体感することできました。さらに、妊娠の経過から子どもの発達、予防接種まで継続的に記録される母子手帳、妊婦健診から産後ケアまでの日本の妊産婦への支援の手厚さを改めて実感できました。

 

光畑:ジョイセフは、戦後の日本が妊産婦の死亡率を下げようと実践してきた家族計画や母子保健の技術やノウハウを途上国にも伝えてほしいという国際的な要望を受けて設立されたと聞いています。その優れた母子保健の技術をご自身の体験を通して実感されたのですね。

 

小野:はい。自分の体験から、ジョイセフの活動をもっと広めるためには産む世代、産むことに関心の高い世代にこそ途上国の出産の現状を知ってもらおうと思い、職場復帰後にはより一般の方に伝わりやすくなるように広報グループを新設してもらい、メディアプランを一新しました。

 

 

 

「なぜ、女じゃダメなの?」

 

 

光畑:そもそも、小野さんが女性支援を仕事に選ばれたきっかけは何だったのでしょう?

 

小野:私の静岡の実家は江戸時代から続く旧家で、いつも身近に代々のお墓や仏様がありました。中学生のとき家を建て替えることになり、上棟式をすることになりました。うちの地方では棟が上がると家の人が屋根に上がって餅を投げる風習があります。私もすっかり屋根の上から餅投げする気満々で友だちまで呼んでいたのですが、親戚からいきなり「女は不浄だから乗っちゃダメ!」と言われて…。

 

光畑:それは、ショックな体験でしたね~。中学生当時の小野さんは、「不浄」の意味は理解できましたか?

 

小野:意味がわからなかったので調べましたね。初潮前だった妹は屋根に上がれたのに、月経がきていた私は「家の神様」に障ると。「なんで女じゃダメなの?」と、ものすごく違和感が残りました。その件以前に、うちは妹と私の二人姉妹だったので、男の子を産めなかった母が何となく肩身の狭い思いをしていたことも子ども心に薄々感じていましたし、祖父からは「嫁にいく」ではなくて「婿をとれ」ということは言われていました。

 

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光畑:そこから、ジェンダーに興味を持つようになられて…。

 

小野:はい。そこから女性学に引き込まれて、大学では日本の伝統的な母性観について研究しました。卒業後は大学院に通いながら、立教大学の職員として働き、ジェンダーの教育・研究活動拠点・ジェンダーフォーラムの立ち上げに関わりました。その一方で、地元静岡の男女共同参画会議の委員で条例づくりを経験するなど、ジェンダーにどっぷりはまっていましたね(笑)。

 

光畑:一貫してジェンダーの視点から研究、活動をされてきた小野さんのフィールドが発展途上国の女性支援に向いたのは自然な流れでしたか?

 

小野:20代のときに、時間があればタイやラオス、カンボジア、ベトナム等、アジアの国々を一人旅していまして。あるとき旅行先の下調べをしていて、たまたま目にした世界人口白書(ジョイセフが日本語版を編集)で女性の平均寿命が30代の国があることを知り、愕然としました。日本のような恵まれた環境がある一方で世界ではこんな不公平が起きている。この状況を何とかできないかと考えていたときに、ジョイセフが職員を募集していることを知り、2003年からジョイセフで働くことになりました。

 

 

 

子連れ外出は旅に似ている

 

 

光畑:小野さんは、ご結婚を機に2005年に静岡県三島市に転居されてから新幹線通勤を続けていらっしゃいます。今日も下のお子さんを連れて新幹線で青山ショップまで来ていただきました。

 

小野:東京に集中している女性にフレンドリーな施設や活動を地元静岡でも広めたいという気持ちと結婚が重なり、新幹線を利用すれば1時間ちょっとで職場につくので「できるのでは?」と軽い気持ちで始めた新幹線通勤ですが、妊娠中でもリクライニング付のイスに座れるうえにトイレも洗面台もあってとても快適でした。

 

光畑:同じ1時間でも満員電車と比べれば、通勤のストレスがだいぶ違いますよね。

 

小野:そうですね。三島駅では始発列車も多く10分ごとに新幹線が出ているので、必ず座れます。現在は育休中ですが、都内に出る必要のあるときには、下の娘も生後2カ月から新幹線で一緒に外出しています。最近の新しい新幹線内ではどのトイレにもおむつ替えシートや紙おむつ用のごみ箱も設置されているので子連れでも快適です。

 

光畑:さすが旅慣れていらっしゃる小野さん、今日も赤ちゃん連れとは思えないほど荷物が少ないですね。子連れ外出は旅に似ていると私は思っているのですが、いかに荷物を減らすかがポイントだと思います。

 

小野:旅も子連れ外出も経験値がものを言いますよね。経験を重ねていくうちに、荷物も最低限何が必要なのかわかってきます。モーハウスの授乳服を着ているので、授乳グッズを持つ必要もないですし。

 

光畑:そういえば、小野さんは上のお子さんのときからモーハウスの授乳服をご愛用いただいています。

 

小野:出産した助産院にモーハウスのパンフレットが置いてあったので、「直接、授乳服を見たほうが早い!」と青山ショップに行ってみたのがきっかけですね。

 

光畑:実際に授乳服を手に取っていただいて、いかがでしたか?

 

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小野:パンフレットより実物のほうがよかったです(笑)。他社の授乳服はスリット部分の布がムダに厚かったり、ただ授乳口の穴が開いているだけだったり、オシャレ着として着られないような授乳服が多かったので。モーハウスの授乳服は、仕事着としても使えて、何より機能的でラクなのがいいですね。冬場でもジャケットを上にはおれば、そのまま使えますし。

 

光畑:ありがとうございます。モーハウスの授乳服を仕事着として使っていただいているユーザーさんも多いです。

 

 

 

子育てで広がる世界

 

 

光畑:小野さんはジョイセフの活動のほかにも、地元三島市で女性たちのジョギングチームHiPsも立ち上げています。

 

小野:HiPs(Healthy, inspiring & Pretty smile for mom’s quality life)は「健康美」と「笑顔」をテーマに、三島市在住の有志ママで立ち上げた非営利団体です。三島市スマートウェルネスの後援を受けて、「いつまでも美しく元気でいたい」と願う女性を応援しています。

 

光畑:「満月ジョグ」や給水所ならぬ「給スイーツ所」を設けた「三島スイーツウエルネス」等々、いろいろなイベントを企画されていて楽しそう!

 

小野:体を動かすだけでなく女性向け講座等も開催し、収益はすべて東北の女性を笑顔にする活動へ寄付しています。女性が健康で美しく、笑顔になれば、家族もうれしいですよね。「地域の未来をもっと元気にする!」をモットーに活動しています。

 

光畑:もともとジョギングはされていたのですか?

 

小野:第1子の産後に気づけば、30歳時から10㎏も体重が増えてしまい腰痛や肩こりに悩まされ、身体の改善の必要を感じていました。東日本大震災の支援で現地に入ったときに、地元のおばあちゃんに「小さい子どもがいるなら、体力をつけておきなさい」と言われたのも心に残っていて。「よしっ、明日から走ろう」とママ友に声をかけて、おしゃべりしながら走り出したのがきっかけです。走っていると何か快楽物質が出てくるんでしょうね(笑)。本当に気持ちよくて、寝つきもよくなりました!

 

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光畑:気持ちいい、楽しいというのが続けるポイントでしょうか。一人で走るのではなく仲間と一緒に走るというのも楽しそうです。

 

小野:はい。ジョギングは授乳中のママにもオススメです。母乳の出が悪いと感じているときに肩甲骨を意識して走ると、効果てきめんのようですよ。忙しいママでも、夜、子どもを寝かしつけた後に走ることもできるし、「健康のために」という大義名分があると、家にこもりがちな女性も外にも出やすくなりますよね。地域を知ることもできるし、自分の健康に自信が持てるし、いいことづくめです。

 

光畑:確かに。健康で楽しそうなママたちが増えれば、これから出産する女性たちにとって素敵なロールモデルになりますね。

 

小野:はい。子どもを持つことで未来志向になれるし、生き方の幅や視野が広がります。地域、保育園、小学校等で仕事とは違う新しい仲間が増えたり、まさに子どもをダシにして世界が広がっていく感じです(笑)。HiPsの活動でキラキラ輝いていく女性たちを見て、「自分を愛でれば愛でるほど母性は輝く」ことを実感しています。

 

光畑:素晴らしいですね。こんなに軽やかに気持ちよく母性という言葉が聞けることはうれしいです。地元での活動がまた仕事にも活かされて、まさに小野さんは、仕事と生きがいと生活が一緒になったワークライフミックスの見本のような方です。今日はありがとうございました。

 

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