「出産はデトックス、子どもができたことで世界が変わった」
ご自身とお仕事について
趣味ではじめたメルマガから 日本最大のコスメ・美容サイトに
光畑:私には大学生と高校生の娘がいるのですが、@cosme(アットコスメ)の山田さんにお会いすると話したら、「すごい!」と大興奮で(笑)。
@cosmeのサイトに訪れる人はもう少し大人かと思っていたので意外でした。
山田さん(以下、敬称略):早い方だと小学生からコスメを使われる方もいらっしゃいますね。新卒面談をしていますと、以前は「高校生のときから見てました」と言われて驚いていたのが、最近では「小学生のときから見てました」と(笑)。
皆さんデジタルネイティブで、情報接触もとても早くなっているようです。最近では、どこか母親のような気持ちですね(笑)。
光畑:@cosmeを始められたのは、まだインターネットが今のように一般的に普及していないかなり早い時期からでしたよね。
山田:そうですね。1999年なので今年で15周年です。私が26歳のときに仲間達と起業いたしまして、会社と同じだけ私も歴史を重ねていますね(笑)。
光畑:それは、奇遇!モーハウスも1999年からインターネット通販を始めたんですよ。
化粧品メーカーにお勤めのかたわら、趣味で始められたコスメ情報のメルマガが反響を呼んで起業にいたったと伺いましたが、はじめから起業を考えていらっしゃいましたか?
山田:私自身、化粧品が大好きで、現在の@cosmeのようなクチコミ情報をメルマガで発信しはじめたのがきっかけです。
最初から起業しようという思いがあったわけではありませんでしたが、メールに対して読者の方から返事をいただくようになって。
実際に商品を試した感想が寄せられたり、新たな情報を教えてくれる方が現れたり…。
光畑:私たちモーハウスも近いものを感じますね。
17年前、当時は海外製の授乳服しかなかったので、日本人にぴったりくる授乳服を作りたくて、ニフティサーブ※の産後フォーラムで、授乳服の情報収集をしました。
海外の授乳服の情報をまとめて発信して、「皆さんもご存知の授乳服ありませんか?」と聞くと、情報が集まってきて…。
山田:情報を発信することで、さらに情報が集まってきますよね。
集まってきた情報を自分の手元にだけ置いておくのはもったいない、インターネット上に「みんなでつくる、みんなのためのコスメガイド」みたいなものができたら、多くの女性にとってすごく便利なんじゃないかな、と思いました。
私は理系ではあるのですが、インターネットに関しては素人でコンピュータのプログラミングができたわけではなくて、利用者としてこんな機能や情報が欲しいと考えたのが起業の始まりでした。
※ニフティサーブ
1986年に設立された会員制のパソコン通信サービス。会員同士でやり取りできる電子メールや、掲示板、「フォーラム」と呼ばれるコミュニティなどを提供し、最盛期には会員数約300万人を誇る日本最大のコンピュータネットワークに。その後、インターネットの爆発的な普及に伴い、コンピュータネットワークとしての使命を終えた。
情報提供を渋るメーカーに インターネット時代の到来を説く
光畑:消費者のクチコミ情報をインターネットで公開するということに対して、メーカー側からの反発はありませんでしたか?
山田:99年当時は、まだネットユーザーが1000~2000万人くらいの時代だったので、いわゆる普通の女性は使っていないのでは?という偏見がありました。
女性でも、オタク的な偏った人しか見ていないイメージだったのでしょうね(笑)。
メーカーさんからは、そうしたサイトに情報を渡したくないという声と、悪口が書かれるかもしれないサイトにそもそも載せないでほしいという声が当時はとても多かったです。
光畑:確かにまだインターネットが今のように認知されていない時代でしたよね。パソコンが高価でしたし、パソコン通信も基本的にテキストだけで(笑)。
山田:はい、懐かしいですね(笑)。
「これからはインターネットでの情報発信が日常的になり、消費者の声をメーカーとして無視するのではなく、共に歩んでいく時代になります」と、ご説明してご理解いただくまでに、ずいぶん労力を費やしました。
光畑:クチコミされることにまだメーカー側も慣れていない時代でしたね。
かなりのご苦労があったと思います。
山田:とくに、外資系メーカーさんから情報をいただくのにはすごく時間がかかって。
10年目にして、某高級コスメメーカーさんから情報を正式にいただけたときには、みんなで涙を流して喜びました(笑)。
この10年間でインターネットがメディアとして認知されるようになったし、生活に必要なツールになった状況が後押ししてくれたのだと思います。
光畑:それはうれしかったでしょうね。
10年前に、ここまで爆発的なインターネットの普及を見越していたなんて、さすが!です。
気になる妊娠・出産について
絶好のタイミングでの妊娠・出産
光畑:山田さんは、現在1歳1カ月の男の子のママでいらっしゃいます。妊娠、出産の時期については考えられましたか。
山田:起業してはじめの10年間は仕事、仕事で正直言って妊娠・出産を考える余裕もない毎日で、このまま子どもはいない人生になるんだろうなと思っていました。
でも、38歳で再婚することが決まったときに、もしできるなら…と不妊治療を始めて40歳で出産しました。
光畑:それは! 最短コースですね。
山田:起業当時からずっと現場で走り続けてきましたが、仕事を安心して託せる仲間も増え、自分の会社における役割が変わってきたな、とちょっと一息ついたのと同時に子どもを考え始めたのが正直なところです。
それと、食生活が変わったことが大きかったと思います。
インスタント食品ばかり食べて、お酒も毎日たくさん飲んで…と、あまりに乱れた食生活を送っていたのを見かねた夫が、毎食玄米を炊いて有機野菜でおかずを作ってくれるようになって…(笑)。
光畑:あら、素敵なご主人ですね!
山田:ちょうど30代後半って婦人科系の病気が出やすい時期ですよね。
私もひどい貧血や生理不順に苦しんできたのですが、夫が食生活を整えてくれるようになってから、みるみる体調がよくなってきて(笑)。
光畑:食生活の影響は大きいですよね。
山田:はい(笑)。食べるものが身体をつくることを実感しました。
その時期に不妊治療を始めたので、時期もよかったのだと思います。
光畑:精神面でひと段落されて、ホッとされたときに妊娠される方って、私のまわりでも多いです。
ここモーハウス青山ショップも、よく「妊娠のパワースポット」と言われていいます(笑)。
それは赤ちゃん連れで働いているスタッフを見て、「子育てって大変!」と身構えていた方が、「子育てってそれほど大変じゃなさそう。
何とかなるものなのね」と、ホッとされたタイミングもあるのかとも思いますね。
産後1カ月で株主総会⁉
光畑:山田さんご自身の妊娠と会社の上場が、なんと同じタイミング(!!)だったと伺いましたが、すごく大変だったのではないかと思うのですが。
山田:初期に切迫流産で1週間安静を命じられたことがあるのですが、それ以降はまったく順調だったので出産の前日まで仕事をしていました(笑)。
もともと会社の前にある病院で出産予定だったので、会社に入院セットを用意していて。出産前日の会議の際には「もし途中で陣痛が来たら運んでね」とスタッフのみんなにも頼んでおいたり(笑)。
たまたま、妊娠経過と私の体調がよかったからのできたことなのですが。
光畑:子だくさんだった昔のお母さんは陣痛が来ると、「じゃ、ちょっと産んでくるから」と産院に行ったという話を聞いたことがありますが、まさにそんな感じですね。
これから出産する女性社員の方たちは、そんな山田さんの姿に勇気をもらったと思います。
産後1カ月には復帰して、株主総会にも出席されたと伺いましたが。
山田:そうですね。ただ、その後に体調を崩してしまって、改めて4か月間の育休をもらうことになりました。
貧血が続き、ひどい乳腺炎も繰り返してこれ以上ひどくなると切開するしかないと言われました。
産後は短期間でもしっかり集中して休んでいたほうが会社にも迷惑をかけなかったかもしれません。
光畑:それは大変でしたね。
山田:たまたま、家の近くにあった助産院に通って何とか復調できました。
助産師さんには、乳腺炎は産後すぐに仕事復帰して、頻回授乳する時期に赤ちゃんにちゃんと吸わせなかったのが原因だと言われました。
母乳って最初からスムーズに出るものじゃなく、赤ちゃんに吸わせていくうちに受給のバランスがとれてくるそうですね。
一人目なので、そうした知識はまったくありませんでした。産んだ後がこんなに大変なんて、誰も教えてくれなかった!と思いました。
光畑:妊娠中は、出産という大仕事がまずあるので、なかなか産後のことまで考えられないですよね。
産院でも指導されていると思うのですが、情報が多くなかなか妊婦さんに届いていないこともありますね。
山田:実家の親が近くにいるわけでもないので、出産前から、産後のケアについてもっと知っておけばよかったと思いました。
出産した病院でも授乳指導がありましたが、約1週間の入院では、やっと赤ちゃんが乳首をくわえるようになったころに退院です。
モーハウスとの出会い
光畑:仕事でお忙しい毎日のなか、妊娠中の情報はどこで得ていましたか。
山田:結局、出産前日まで仕事をしていたため時間がなかったので、ネットの情報のみでした。
妊娠9ヶ月めに慌てて大手の妊娠コミュニティサイトに入会して(笑)。
確か、モーハウスさんの情報もそちらで知ったのだと思います。
実際に商品を見たいと思い、職場からも近い青山ショップに行って、最初に、ブラジャーとTシャツを購入しました。
ショップスタッフの方も、授乳経験者なのでとても親切にいろいろアドバイスしてくださって。
実際に使ってみて、授乳しやすいようによく考えられていると実感しました。肌にもやさしいですし。
光畑:ありがとうございます(笑)。
モーハウスを選んでいただいた理由はどんなところでしたか。
山田:機能的にいろいろ研究されているというのをウェブで拝見して、まずそのこだわりにひかれました。
妊娠中も、仕事着になるマタニティがあまりなくて外国製のものをネット通販で購入していたのですが、ちょっと体型に合わなかったり、いかにも外国仕様だったり。
モーハウスが日本人向けに作られた日本製の授乳服ということと仕事の場でも着られるデザインも取り揃えているところに魅力を感じました。
光畑:私も海外の授乳服はいろいろ集めて着てみたのですが、なかなかフィットするものがなくて自分で作り始めたのがきっかけなので、そう伺うとうれしいです。ほかにマタニティ用品ではどんなものを購入されましたか。
山田:なかなかマタニティショップに足を運ぶ暇もなくて、出産の1ヶ月前に大手赤ちゃん用品店に行って、そこにあった冊子で勧めていた出産準備セットを全部まとめて買いました(笑)。
光畑:そのなかで実際に買ってはみたけれど、使わなかったものはありますか。
山田:使い捨ての母乳パットはそれほど使わなかったのにたくさん買ってしまって余りました。
ベビーバスも大きめの洗面器とシンクで事足りてしまいほとんど使わなかったです。授乳クッションも私の場合はほとんど使いませんでしたね。
光畑:せっかく買ってしまったのだから、出産した病院で使っていたからと、モノに縛られてしまうお母さんもいらっしゃいます。
いらないものは使わない、と子育てを効率化されているのが素敵ですね。
出産はデトックス 自分自身も健康に
光畑:情報はほとんどインターネットから得られたと伺いましたが、経営者仲間やお友だちで、子育てのロールモデルになる方はいらっしゃいましたか。
山田:自分自身に子どもがいなかった時期には、子育て中の方との接点はすごく少なかったですね。
その頃はまったく意識していませんでしたが。
子どもさんはいらっしゃらない女性経営者の先輩も多かったですし、そもそも女性だけのコミュニティの中にいた経験があまりないので、子育てについての情報はまったくと言っていいほどなかったです。
光畑:乳腺炎のあとに改めて育休を取られたと伺いましたが、育休中はいかがでしたか。
山田:ずっと仕事中心の生活をしてきたので、家にいて育児や家事に集中するという体験が初めてで、すごく新鮮でした。
今まで自分がいかに家事をやってこなかったのかということを実感しましたね(笑)。
また、専業主婦の方たちのご苦労も今さらながら感じました。家の家事や料理はとても奥が深いものなんだなと。
家族の健康状態に目を配り、栄養バランスをちゃんと考え、しかも美味しいものを毎日準備するだけでも大変なお仕事だなと…
光畑:お話を伺うと、育休期間中もかなり生活をエンジョイされたのではないでしょうか。
山田:思いのほか楽しかったです。生まれて初めて「揚げびたし」を作ってみたり(笑)、色々なフルーツでジャムを作ってみたり。自分で食事を作ることで、食が体を作ることをますます実感しましたね。
肌の調子も全然違ってきますし。
光畑:出産をきっかけに生活を見直したり、ご自身が健康になられたとおっしゃる方もいらっしゃいますよね。
山田:そうですね。出産って究極のデトックスだなと思いました。すべて出ますよね、髪も抜けますが(笑)。
独身時代より明らかに体調もよくなりましたし、食生活と睡眠は格段に変わりました。
また、私は大学も理系で女性が少ない環境でしたし、仕事においても女性であることは特別意識せずにここまで過ごしてきたように思いますが、出産して「男女は身体の構造が違うんだ」ということを実感しました(笑)。
光畑:睡眠時間も変わりましたか。
かなり、ショートスリーパーなのではないかとお見受けしましたが。
山田:今も夜泣きはあるのでちょこちょこ起きるのですが、横になる時間は以前よりも増えたので、かなり身体は休めていると思います。
以前は睡眠は平均3~4時間で、遅くまで仕事して、夜9時10時過ぎから人と待ち合わせをして飲むなんてことも当たり前の生活でした(笑)。
今では、朝子どもが起きる前に自分の仕事を下準備をしたり、朝食の支度をしたり、今ではすっかり朝型の生活です(笑)。
仕事と子育て両立のコツ
「カッコ悪いところも含めてさらけ出す」のが仕事と子育て両立のコツ
光畑:会社としてのこれからの目標はどんなことでしょうか。
山田:会社の事業としては、まだまだ道半ばだと思っています。
今は化粧品関連事業が中心ですが、美容サロンやヘルスケアの情報など、より多くの女性の『美と健康』にお役立て頂けるよう領域を広げていきたいですし、対象も国内だけではなくアジアなど諸外国へ広げていきたいと考えています。
光畑:出産、子育てを通して、仕事のうえで変わったことはありますか。
山田:出産によって自分の価値観が少し変わったように感じます。
働くことの意義にも、よりよい社会のため、未来のために今どうすべきか、といったことを以前より考えるようになりました。
子どもが出来てから、自分の息子がかわいいのはもちろんですが、街中で出会うお子さん、みんながかわいくて仕方がないんですよ(笑)。
モーハウスの青山ショップも子連れで働いていらっしゃるスタッフさんが多いですよね。赤ちゃんがみんな静かでびっくりしました。
お母さんと一緒にいる安心感なのかしら。
光畑:皆さん、驚かれます(笑)。
仕事中でもいつでも授乳してもらえる安心感と、いろいろな大人に囲まれることで子どもの社会性も育っていくのかと思います。
最後にお伺いしたいのですが、仕事と子育てと両立していくうえでの何かコツのようなものはありますか。
山田:2つあるかなと。
1つは、時間あたりの生産性をいかに上げられるかということを常に意識するようになったこと。
もう1つは、カッコ悪いところも含めて日常は周りにさらけ出していこうと考えるようになったこと。
以前は仕事と私生活はきっちり分けたいと思っていたのですが、今では会社でも「朝、子どもがウンチをまきちらしちゃって!」(笑)とか、「今、保育園でこんな病気が流行っているらしくて」といった話をあえてして、なんとなく日頃から状況を伝えるようにしています。
光畑:それはいいポイントですね。
女性、男性問わず、これから出産される社員の皆さんもすごく参考になりますよね。お子さんの病気で仕事を休まなければならないこともあるわけですし。
山田:そうですね。それがずっと続くわけじゃないということも職場の先輩ママから教わりました。
皆さん口をそろえて「大変なのも2、3年だから」と言ってくれます。
光畑:昔の会社社会ではオンオフがはっきりしていて、ビジネスの場ではプライベートは見せてはいけないという暗黙のルールがありましたが、そこをトップ自ら見せているのが素晴らしいですね。
非常に合理的でラクになるポイントだと思います。
山田:役員は私以外全員男性なのですが、みな同世代で先にお子さんが生まれている役員も多いので、自然にサポートしてくれて、タイミング的にはすごく恵まれていました。
会社としても、昨年オフィスを移転したのをきっかけに子どもさんが遊べるプレイルームを作り、モーハウスさんの子連れ出勤ではないですが、休日出勤があったりした場合には小学生の子どもを連れてくる社員もいます。
私自身も会社の行事には子どもを連れて行ったり、やむを得ないときに子どもを連れてミーティングに出たこともあります。
小さいころからたくさんの大人に囲まれているお陰か、息子は人見知りがほとんどないようです。
光畑:トップである山田さん自らが、これから子育てを考えている社員の皆さんの素晴らしいロールモデルとなっていらっしゃいますね。
今日はありがとうございました。
山田メユミさん プロフィール
1972年生まれ、東京理科大学卒。化粧品原料メーカーを経て、97年化粧品メーカーに入社。 プランナーとして商品開発を手掛けるかたわら、趣味で始めたメルマガの反響を元に99年、コスメ情報専門サイト「@cosme(アットコスメ)」を立ち上げる。 メーカー退社後、株式会社アイスタイルに正式参画。 現在、株式会社アイスタイル取締役。 @cosmeは、現在、月間閲覧数3億PVにものぼる日本最大のコスメ・美容の総合サイトに成長。日経ウーマン「Woman of the year」では、2001ネット部門・2004リーダー部門を受賞。 |
本取材は、2014年10月に行われました。お子様の年齢等はその当時になります。
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