「マザーリングマザー」
光畑:たけながさん、今日はお花をありがとうございます!桜ですか?
たけなが:はい、桜です!光畑さんがハイサービス300選に入賞されたと伺い、パーッとお祝いの気持ちをこめて…。
光畑:ありがとうございます。わざわざいらしていただいて、本当は私のほうがお花をさし上げなくてはいけないのですが…。
たけながさんは 大先輩であり、ご一緒できること、光栄です。
たけなが:こちらこそ、今回このような場を設けていただきありがとうございます。
子育ての本を取り上げていただいて嬉しいです。
光畑: 皆さん、たけながさんのことは、ご存じだと思いますが。プロフィールを少し…。お子さんは?
たけなが:3人の子の母です。37,35,33、あっ、違うか?下が年子なので、34ですね。子どもの年齢があやふやになっちゃうなんて(笑)
光畑:私も、先日の雑誌の撮影で、16、12、8歳の子の母です。と答えていたら、「ボク、9歳だよ」と言われました。3人もいるとこんな大雑把になってしまいますね。(笑)
たけながさんは、もうお子さんは大きくなっていらっしゃいますが、昔から子育てママの支援をされているんですよね?
たけなが:はい、介護・看取りなども含めてトータルにテーマにしていますが、その時の母親である女性の立場を味方してあげたくて…。ずっと、子育て支援を続けています。
母親になった女性に「大丈夫、大丈夫!」と心が萎えないように、メッセージを送り続けています。
光畑:たけながさんは、本当に心強い存在です。実は、この著書の中にモーハウスのことも載せていただいているんですね。
たけなが:光畑さんのユニークな働き方に注目していて…。こんな働き方もあるのよ、と紹介をしています。
光畑:ありがとうございます。ところで、皆さん、「マザーリングマザー」ってご存知ですか?「お母さんを応援するお母さん」という意味ですね。
この本の中で、「これぞ、たけながさん!」と思ったのが、この「マザーリングマザー」ということばです。
強烈な喪失体験:育児ストレスという言葉すら認められなかった時代
たけなが:ありがとうございます!「マザーリングマザー」を果たしてほしい役割は、情緒的な支援なんですね。
時代とともに、ハードの部分はどんどん進んできたけど、モーハウスさんみたいに時代に合わせて形を変えていくことも大切なんですね。
ずっとその中で変わらないのは、育児中のお母さんの気持ち。その気持ちを、ずーっと強く支えてあげる人が必要だと思うんです。
どんな気持ち?っていうと、
「結婚して、新居を構えて、素敵な旦那さまがいて、こんな可愛い赤ちゃんも生まれて、何て幸せ!」
と言われるけれど、同時に職場を失くし、今まで職場で喋っていた友達を失くし、もしかしたら、実家や住み慣れた家も離れて、可愛い赤ちゃんは生まれたけれど、自分の自由時間はなくなって、自分が自分でいられなくなってしまったという喪失体験があるということ。
そして、それに自分でも気づいていないということもあるんですよね。
「なんで、こんなさみしいんだろう?」
「どうしてこんなに夫に対してヤキモキするんだろう?」
「私、ひとりぼっちだー」という感覚を持っている方多いんです。
そんな時に、「ここにいるよ!一緒に考えよう!」という存在が必要なんだと思うんです。
光畑:すごく納得です。去年本を書いた時、「社会とつながる育児」というタイトルのところがあって、「育児=何か他のものをあきらめている?「社会とのつながりをあきらめている?」と、その気持ちを私なりに分析して書きました。
そもそもそのあきらめる気持ちが嫌だなあと思って、授乳服を作り始めたんですが…
しかも、たけながさんがおっしゃる通り本当に喪失体験があるということに皆さん気づいていない方が多いんですよね。
たけなが:まず自分で、「あっ、そうなんだ!喪失感を持つことは当たり前なんだ。」と思うことが大切だと思うんです。
そして、周りの人たちや、社会の制度を作っている人たちもそのことを理解することが必要だと思います。
光畑:そこの根っこの部分が「あ!同じ事を感じている!」と思いました。
この本は、いろんなノウハウが載っていて、うなずくことがたくさん書いてあります。でもその中でも、この「大丈夫!」という言葉が、一番心強いし大事ですよね。
たけなが:ありがとうございます。
今年還暦を迎えますが、昔は、子どもを保育園に預けて働く女性は少数派でした。「子どもを捨てる気か?」と言われたこともありました。
でも、今はだいぶ変わってきましたね。10年20年経って、ミツハタさんみたいな若いお母さんたちが出てくるようになって嬉しいです。
会場:え!光畑さんと同じくらいとお見受けしていました。(一同びっくり)
光畑:そうなんです。たけながさんがそんなお年とは皆さんわかりませんよね?。
2009年5月に出版した『働くママが日本を救う』を書く時に、保育の歴史をいろいろ教えていただいたのですが、昔は保育園もないから、赤ちゃんを家に置いて、会社に行って、お昼にまた戻ってというようなこともあったそうです。
今でも、待機児童などまだまだ問題があるとはいえ、昔と比べれば少しずつ進んできていますよね。
それでも、まだまだ喪失体験を押しこめている人は多いですね。「子どもを可愛いと思えない」「自分のことを考える時間を持つことに罪悪感を持っている」など。そういうことは感じられませんか?
たけなが:そこがね。これだけ時代が進んだのに、何でここは(悩みは)変わらないんだろう?と思います。
光畑:自分の気持ちに気がついていないところ、自分で自分に呪縛をかけているところがあるのではと思うのですが?
たけなが:確かに。まずは、自分自身の気持ちに言葉をつけてあげることが大切だと思うのね。
先程私がお話しした、喪失体験をカウントしないのよね。
だけど、それをしてみてほしいなと。
そういう喪失体験で似ているのは、定年退職後の男性。
これは、社会的にも認められていて、おぜん立てもしてあるけど、こと、お母さんになると、「何を言ってるの?」と言われるんですよね。
昔、電話相談などで、育児支援をしようとした時に、「育児ストレス」という言葉を生みだしたんです。それまで、ストレスは企業戦士につけられる言葉で、「三食 昼寝付きの専業主婦に、何がストレスだ?」と言われたんです。
それから、育児がなぜストレスか?ということを論理だてたり、データを集めたり、理由づけする必要があったのです。
育児中のお母さんが、どんなことでモヤモヤしているのか?何が喪失体験なのか?意識できるといいなあと思うんです。
具体的に、「こうだから、こうなんです!」と言えない、モヤモヤした状態だから言えない。伝わらない。感情的になる。分かってもらえないという悪循環に…。
でも、どうすれば夫を理解者にできるか? のノウハウが伝わってないんですよね。ついつい怒りのほうが大きくなってしまったり…。
ライフステージごとに変わる3つのもの
光畑:お母さんが抱える悩みやモヤモヤの伝え方がわかるといいですね。
お母さん達は自分を大切にしてほしい、と思いながら自分を殺してしまう。
実はこのショップにパパ連れでいらっしゃるファミリーも多いのですが、実は女性のほうが授乳服を買うのを躊躇することが多いんです。
男性のほうは、素直に「楽だから買えばいいじゃん」となるのですが…。
たけなが:そういう男性がいるというのは素敵ですね。
そうですね、一歩踏み込んで「君に必要なんだから一緒に買おう!」と言ってくれるような男性がどんどん増えてほしいですね。
光畑:日本の男性はとってもシャイなので、どう愛情表現すればいいかわからない方が多いんですよね。でも伝えてくれないとわからないじゃないですか…。
たけなが:日本の男性ももっと素直にパートナーへの感謝や愛情を言葉にできるようにしてほしいですね。
せっかくパートナーになったのですから、お互いが素敵に楽しく生きていくために恥ずかしいけど言ってみる、行動してみることも必要じゃないかしら。
光畑:それにしても、(ページを見ながら…)この本の中の3つの輪、スゴイ感動しました!
「ライフステージごとに3つの輪(愛・仕事・社会参加)は変わる」
たけなが:子どもに振り回されている日常でも、その3つのバランスを取っていくとよいですよ。
人間の本当のバランスは、3つの輪が満たされている社会が理想だと思います。精神衛生学的にも良いです。ストレスがたまると、ノイローゼになりますから。
例えば、ハンディキャップの方が、「仕事はあきらめないとダメ?」、「旅行はダメ?」、「結婚はダメ?」と自ら言いますか?
今、赤ちゃんを胸に抱いているみなさん。そう考えてはいませんか?ハンディだと思っている事の大きさは違うけど、心のバリアーを自ら作らない、ライフステージごとの3つの輪を意識することは大切な部分だと思うんです。
光畑:私は、「ゼロにしないことが大事」というところがいいなあと思います。「小さくすればよい」というところも、まさに共鳴する部分です。
たけなが:大切なのは、 いつでも家族には愛が大事というところかな?!
光畑:たけながさん、ありがとうございました! では皆さんからのご意見やご質問をお受けしたいと思います。
会場:今、2人目育休中で、4月から復帰予定でいます。実は夫について不安に思っています。夫は仕事が忙しくて家族の時間を作る事が難しく、これまでも育児にあまり積極的ではなかったので、復職した時にどうなるのかな? 衝突多くなるのかな?と。男性も変わってほしいとありましたが、具体的にどうすれば変わってくれますか?
たけなが:大きな意味で、「家族の時間が大切です」と社会が認めてくれればいいのだけど…。せめて、あなたが夫に対して言い続けることは大切です。そのときに気をつけることがあります。ものは言いようで、言い方も大事。
どうしても煮詰まってから話すとやはりこちらもけんか腰になりがち。優しく子どもに話しかけるように、そしてわかってほしい、やってほしいという気持ちを忘れずに同じトーンで、水がひたひた落ちるイメージで繰り返し繰り返し話すんです。そしてやってくれたり理解してくれたらほめる! 男性はほめられるとさらにやってくれます。家事で手順が違ったりしても文句を言わずほめてくださいね。やる気を消さないように。決して「なんでわかってくれないの!!」とか「ちゃんとやってよ!!」とけんか腰に言ってもかえって逆効果です。必ず変化はおきますよ。
そして、時には人の手を借りるのも大切です。私も以前ある方に、ご自身のお給料の半分は、育児のサポーターにかけていいと言われて目からウロコでした。お給料のほとんどがベビーシッターや保育にかけていて、何のために働いているんだろうって悩んでいたときでした。子どもが小さい頃というのはほんの一時。そのときに収入の多くが育児のサポーターに支払う割合が大きくても、仕事を続けていくことができれば後々それが活かされて、子どもが大きくなってきたら、保育にかけるお金も少なくなるし、自分も手に職がある。5年後、変わってくるんですよね。
そのときに羽ばたけるので、そのコストを惜しんで自分を追いつめないこと、とアドバイスいただいたんです。
もちろん、一番のサポーターとなるのはパートナーなので、夫に「私をフォローしてね!」 とアピールするのも大切ですよ。男の人は、言わないと忘れちゃうから。男性は子どもが生まれるとどうしても子ども最優先になり、その前にパートナーである妻を忘れがち。子どもの前に私がいる、というアピールを忘れずにしてくださいね。
光畑:子育て支援じゃなく、お母さん支援が大切なんですね。「ほめ上手」という言葉も大事ですね。
たけなが:そうですね。産後のお母さんってほめられないんですよね。だから感謝の気持ちが枯渇しちゃう。出産したとたん赤ちゃんのお世話でへこたれてしまうのは、赤ちゃんのお世話をしてもあたりまえでいてほめられない。不安になってしまい、それがどんどんマイナスに作用してしまう…。変えていくのは大変です。日本人ってみんな、ほめ下手ですよ。
光畑:ほめて育てる、というのも流行ですよね。そういえば昔は叱りまくっていた映画やお芝居の監督も、今はほめて育てる人が増えていると聞きました。
たけなが:山田洋二監督は、ほめ上手ですね。「俳優は、怒ってはダメ。肯定的なダメ出しが必要」とおっしゃっていますね。そういう人が、ニューリーダーってことですよね。
光畑:それって、子育てにも言えますよね。ついついダメ出ししてしまい、ほめるのは難しいものですが、その視点は大切にしたいですね。
会場:私の母はずっと働いていたので、私も子育てしても働くのが当然というか自然に選択していたのですが、私が子どもを産んだ今になって「あなたには、小さい頃かわいそうなことをしてしまったわね。」と言われて…。それまで、何とも思っていなかったのですが、その母に小さな子を預けても働くのはかわいそうと言われてしまい、ちょっと揺らいでしまいました。
たけなが:長いスタンスで考えてみるといいですよ。どんなお母さんでも思春期はあって、第2の思春期みたいな時期が更年期なんです。更年期って後悔や迷いがポロっと出る時期なんです。ああすれば良かったのかな、とか、気持ちが揺らいじゃってぽろりと言葉で出てしまったんでしょうね。お母さんの心もきっとそういう選択もあったな、って振り返っていろいろ悩んでしまうんでしょうね。あやなす縄のごとく。人の気持ちはウェーブするので、そう受け止めてください。
お母さんの時代とは違って今は多様化の時代。自分自身を問う時代になりました。自分自身がどっちが楽か?自分の気持ちがいいか?で判断するといいですよ。
光畑:価値観って、グラグラしますよね。一日の中でも、朝と夜で違ったり…。私も楽な方を選択します!
子どもと仕事と相反する対立軸におかないで同じ方向を見ていてほしいですね。仕事と子育てでお母さんを取りあうのではなく。同じ軸に子育ても仕事もおいてみる。そして時々価値観を確認するといいですよ。子どもの頃やりたかった事って何だろう、とか、自分の好きな事、したい事って何だろう、って考えたり感じる時間があると良いですね。
会場:周りをいかに味方にするかが大切なんですね。
たけなが:そうですね、社会がもっとお母さんの味方になってくれれば良いのですが…。少子化対策を議論していますが、もっと社会がお母さんを大切にすることがまず必要と思います。お母さんを大切にしない大人を子どもは信用しない。会社経営者の方によく言うのですが決して、子どもの前でお母さんを批判しないでくださいって。目の前で母親がしかられたらその子はずっとその大人=会社に対して反感を持ちます。逆に目の前でお母さんを大切にしている事がわかれば、その会社のファンになるでしょう。そうなれば将来その会社のファンが増える事になる。もっとそのことに、社会が気づくといいのですが…。
会場:母親の精神状態が大切だということがわかりました。自分が思っていることを、肯定していいんだと思いました。これからは、マザーリングマザーになっていきたいです!
たけなが:みなさん、お誕生日、お祝いしてもらっていますか?プレゼント、もらっていますか?たとえば、月に一度、ラブラブで出かけていますか?ぜひ、そんな時間を持ってください。定期的に続けてね。すると、どんどん楽しくなってきますよ。子育ての中でも、そういう時間を持つ事で大人の男と女になるといいです。
お互いの気持ちをシェアする時間を積み重ねてほしいなあと思います。忙しさの中で、言葉を失くしてしまわないように…。自分自身を大切に、これからの生活を楽しんでくださいね!
会場:今日はありがとうございました。私、こんな雰囲気大好きです。
今はまだ子どもが小さいのでコミュニケーションがとれずに困ってしまうこともあるのですが、これでコミュニケーションがとれれば楽なんだろうなと思います。子育てって、部下育てに似ていますね。マネージメント能力というか…。自分は下を育てるのが苦手だったのでそういう部署にはなかったのですが、任せること、待つことなど教えられる事が多いです。
光畑:仕事から離れているのを焦るのではなく、マネージメント能力を鍛えていると考えるといいですよ。きっと、いい上司になって復帰できますよ! 子育てを経験すると人をどう、いかに使うか? 段取り力も鍛えられていると思います。
たけなが:子育てが苦しいのは、職人タイプ、芸術家タイプの人かな? 自己決定している爽快感がある職業はつらいかも。そういう人は自分で育てなきゃ!となるのではなく、そういう事が得意の方で助けてくれる人を探すのもいいですね。
光畑:きっと、根っこの部分のマネージメント力が上がっているので、焦らず、そのスキルを育てていると思って育休を過ごすと思いますよ。
たけなが:私、今62歳ですが、今までに家族と自分と仕事との折り合いをつけるためにいろんな選択を重ねてきました。その時々で悩みましたが、うまくやっていける道、たくさんありますよ。キャリアはゆっくり磨きましょう。子育てを機に人生のギアチェンジするといいですよ。
光畑:別の価値観を入れていくチャンスになりますよね。男性ならそれこそどこかの山奥に修行にこもらないとできないですよね。それが女性は子育てというギアチェンジができる時間が取れる。「子育ては、何とお得な人生なんでしょ!」と思います。
たけなが:男性は、その点単調な生活ですが、女性はドラマティックに変化しますよね!
光畑:子どもを産んだらおしまいだと思っていましたが、どんどん面白くなってきました。皆さんはまだまだお若いですし、これからいろいろ経験できると思います。ぜひ、これでおしまいなんて思わないでくださいね。
たけなが:先は長い 先は長い 私なんて62歳!これからまだまだいろいろチャレンジしていきたいと思いますよ!
会場:それが一番のサプライズです!
光畑:そのギャップがいいですね。
たけながかずこさんの最新本「もっと子どもとうまくいく!働くお母さんの習慣術」発刊記念!
接遇コーディネーター、育児関連企業コーディネーターのたけながかずこさんとモーハウス代表光畑のクロストークが3月16日、モーハウス青山ショップで開催されました。
今回のクロストーク、復職前のママさんがたくさん集まりました。
艶やかで、パワフルなトークは 大盛況でした!