現代であっても、3歳児神話

thumb_img_8777光畑:菅原先生、ありがとうございました。

資料を拝見して、30分の時間でこれだけの内容をお話しいただけるのか、と思っていたのですが、最後までお話いただきました。

子育てだけでなく、家族や夫婦という難しい問題を縦断的にお話しいただいたと思います。学ぶポイントがとても多かったのですが、二つだけ、さらにお話を伺いたいと思います。
まず、印象に残ったのが、皆さんもびっくりされたと思いますが、三歳児神話ですね。子どもが小さいうちは離れていない方が良いと思っていた方が7割以上というデータ。すごい数字でしたね。

 

菅原:お父さん達73%ですね。

 

光畑:これが20年前のデータかしらと思いきや、2006年のデータ。たった6年前です。

 

女性の就労率は実はアップしていない

菅原:この30年日本の女性の就労率というのはあまりアップしていないんです。先進国の中でもとても停滞している国になっていて、そこにはこの考えが根強いんですね。
私は学生に、結婚して働き続けたいなら、結婚する前に「どう思う?」と聞いて、もしも子どもが小さいうちは家にいた方が良いと言うなら、話し合っておいた方が良いよ、とアドバイスしています。

 

光畑:要因の一つに心理的な要因というのをあげていらっしゃいましたね。
たとえばこの場にも、お子さん連れの多くのお母さん達がいらっしゃっています。これは、20年近く前の私たちの子育て中は考えられないことでした。こんなふうに子育てが変わって来たのに、親の心にはまだまだ心理的な抑圧があるんですね。

働きたいけれど、子どもに影響するのでは、という不安がいつもお母さんの心の中にあるような気がします。

 

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お母さんの不安が一番良くない。誰でもサポートすることが大事

菅原:お母さんの不安がいちばん子どもには良くないのです。

 

だから、お母さんが働きたいと思ったら安心して働けるように、また、お家でじっくり子どもといたいと思ったらそれも安心してできるようにサポートするのが大事だ、いつも考えています。

 

光畑:本当ですね。私たちも子どもと関わる仕事をしているのは、子育てが辛い体験と思うのではなく、嬉しい思いで子育てした方が、きっとお母さんも楽で子どもにとっても良い事なのではないかな、と思うからなんです。

そういう意味で、私の何となくやってきたことを、発達心理のご専門のお立場で裏付けて頂いたような気がします。

 

菅原:ありがとうございます。

 

大事なのは良質な人との関わり。家庭の内外で様々な人との関わりを。

光畑:それから、今日は、子どもの成長発達に大事なのは良質な人との関わりということをお話しいただきました。

私たち、実は、この近くのショップや会社で、赤ちゃんを抱っこして働くという子連れ出勤をしています。そこで連れられている赤ちゃんは何だか社会性があるように感じています。あ、うなずいている方も多いですが(笑)。

お母さんと二人っきりでいる場合と、赤ちゃんの性格が違うような気がするんです。そういうのは持って生まれたものではなく、後天的なものなのかな、と常々感じていました。
この良質な人との関わりというのを「家庭の内外」とおっしゃっていましたが、家庭内で全部やらなくてもいいんだな、と、印象的でした。

もう少しそこをお話しいただければ。

 

菅原:子どもの立場から立ちますと、0歳の時からできるだけいろんな種類の人と会った方が圧倒的に社会性の発達に良いんです。

 

知っている大人が主にお母さん一人、というのはやっぱり対人関係としては寂しく思います。

いろんな種類の人がいるというコトだけでも勉強になりますし、いろんな関わりが自分から起こるということがミソです。

 

ある人は自分に厳しく接するかもしれないけど、ある人は甘いかもしれないし、大きな手でなでてくれる人もいれば、小さな手でぎゅっとつかんでくる人もいるかもしれない。

そういう「人と自分との関わり」が多様であることということが非常に人間の子育ちの中で重要なトレーニング、原体験になります。

いろんなサイズの人、性別も多様に関わってもらうのが良いですね。

 

光畑:そうですね。
今日も、ウィメンズプラザフォーラムということで、男女共同参画がテーマのイベントです。

 

こうした機会には「多様性(ダイバーシティ)」はキーワードとしてよく出てきますが、赤ちゃんの頃からダイバーシティを体験している、ということですね。

 

菅原:今日のこの場は、ある意味理想的な種類配分じゃないでしょうか。

年齢も性別もいろいろいて、また赤ちゃんは赤ちゃんが大好きなんですけれども、赤ちゃんにもいろんな月齢の赤ちゃんがいて、理想的だと思います。

 

光畑:私たち女性にとって、これからお産をするようなな学生にとっても、また男性にとっても勇気をいただいたお話だったと思います。

 

 

ありがとうござました。(拍手)

 

 

2012年11月10日に東京青山ウィメンズプラザ ホールで「いいお産の日in青山2012」を開催しました。メイントークとして、お茶の水大学教授 菅原ますみ先生にご登壇いただき、メインテーマ「産むこと、働くこと」をテーマに講演をいただき、その後、モーハウス代表光畑とのクロストークを行いました。子どもの育ちの環境と母親の関わり、家族の関わり、女性のそして家族全体の働くこと、そして産むことについて、子育てと仕事を両立してきた経験と、研究成果を交えたトークを行いました。

 

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