国際的な活躍のきっかけ

 

光畑:このトークをちょうど、ガールズデーウィーク中に開催できるのは、とてもすばらしいタイミングだと思います。

大崎さんのTシャツは、その活動なんですよね。

 

大崎:そうですね。10月11日が国際ガールズデーです。

先日、国連大学で国連広報センターとプラン・ジャパンの共催でメイン・イベントがあって、そこでもお話ししてきました。

私が今着ているTシャツは、私が理事を務めているプラン・ジャパンのキャンペーン活動の一環でして、一人で宣伝しています(笑)。

▲大崎さんの著書『女の子の幸福論』を持つ光畑と国際ガールズデーのキャンペーンTシャツを着た大崎さん

 

光畑:今日はこの本『女の子の幸福論』の出版記念として、と言っても出版から少し日にちが経ってしまったのですが、この本を巡ってお話をできればな、と思います。

改めて読み返したのですが、女の子にぜひ読んでほしい事が本当に多く散りばめられていて、私には女の子が二人いるので、ぜひ読んでもらいたい、と思いました。
大崎さんは、TBSの番組「サンデーモーニング」のレギュラーとしても、ご活躍ですが、ずっとジェンダーに取り組んでいらっしゃって、途上国の女の子達の支援や国際協力などにもご尽力されているんですよね。

 

 

 

大崎:はい。もともとはUNDPという国連の開発援助機関で、途上国のジェンダーの問題や女性支援に取り組んでいました。今もプラン・ジャパンを通じて途上国の女の子の支援に携わっています。

海外には命が脅かされるような状況下にいる人たちがいて、そういった状況とは単純に比べられませんが、この日本でも根深いジェンダー問題がたくさんあると感じています。

たとえば、災害後の緊急支援ではどんな人道的配慮がされるべきかを定めた国際基準があるのですが、東日本大震災の時にはその国際基準がほとんど守られていなかった。

やはり、弱い立場の人たち…女の人、妊産婦さん、赤ちゃん、障害のある方にしわ寄せが行き、避難生活に大変な支障が出てしまう。

そんな状況がこの日本でもあり得るんだと、あの震災の時に痛感しました。

 

 

 

光畑:9月には一緒に南三陸へ、女性起業家のメンターとして復興支援に行ったんですよね。

その新幹線の中ではかなりいろいろとお話いただいて…。私もそんな国際基準が日本ですでにあったなんて知らなかったんです。

でも、基準があっても機能しなかった、というのも驚きでしたね。

 

 

大崎:平時の社会のあり方の表れだ、と感じています。

 

 

光畑:ジェンダーについての国際的に取り組んでいる。

そんな専門家というとすごい感じに思われるけど、この<幸福論>を読んでみると、実はとってもゆるゆるなんですよね(笑)。

バリバリなキャリアで、お美しくって…すごい女性!という印象ですが、この本を読んでみると、実は流されて、流されて今に至る、というのに驚くとともに共感してしまいます。

 

 

大崎:いやいや…

 

  

光畑:このところ講演会でお話ししていることなんですが、目標を掲げてそれに全力をかけて遂行するという「山登り型」のキャリアプランがありますよね。三浦雄一郎さんみたいにエベレストを登るぞ!その目標遂行のためにいつまでにコレをするぞ!!という感じのキャリアプラン。そういうキャリアプランではなく、川下りのように流されて、流されていながら自分の目標を進めていくような…。そういう事に共感される方が増えている。特に女性からはよく、私の川下り型キャリアプランの話に励まされたと言って頂いているんです。

この本の中で紹介されていた「Why not?」というのが印象的ですが…

 

大崎:そうですね、そもそものお話なのですが、私が女子大生の時ってバブルの絶頂期で株価が最高値を記録したころなんです。今日は1万3千円くらいだったと思いますが、大学1年生の時、1989年12月に3万8千円を記録し、イケイケドンドンな時代でした。

上智大の比較文化学部(今は国際教養学部)の学生の時に、毎日新聞社の英語学習紙「毎日ウィークリー」の編集部でアルバイトをしていました。

その頃は紙面のレイアウトも手作業で、画用紙に切ったり貼ったりして作っていました。将来の夢がジャーナリストだったので、楽しかったです。

毎日忙しく過ごしていたのですが、ある時、もっと落ち着いて勉強しないとなーと感じて、アメリカに留学しようと思ったんですね。

当時はインターネットなんてないから、電話帳みたいに分厚い全米大学ガイドブックで調べまして。フィラデルフィア郊外の女子大のブリンマー大学に留学したんです。津田梅子がかつて留学した、とてもリベラルで進歩的な大学でした…。女性リーダーをたくさん輩出しています。

その時に、近くの大学に留学していた元夫と出会いましてですね、異国の地でなんだか燃え上がってしまいまして、結婚したんですね。その人がNYにいたので、ニューヨーク大学とコロンビア大学の大学院を受けて、コロンビア大学の大学院に進んだんです。

  

光畑:それで合格しちゃう所がすごいですね。

  

大崎:そこは、アメリカの大学の良い所なのですが、それぞれの大学院が「どんな学生が欲しいか」を明確にしているんですね。

ニューヨーク大学は、研究中心なのでアカデミックな経歴・志向のある学生、それに対してコロンビア大学は多様な経験をしている学生を受け入れるという事でした。

 

ニューヨーク大学には落ちて、コロンビア大学に受かったんです。

ちゃんと見ているなあ、と思いました。

こうして、コロンビア大学の国際公共政策大学院のインターナショナル・メディア専攻に進むことになりました。

 

 

ところが、大学院が始まる前に妊娠してしまいまして…

 

 

光畑:そこで「Why not?」があるんですよね。

  

 

妊娠して出産していることが「何か?」

 

大崎:せっかく大学院に受かったんだけど、妊娠してしまったし、出産もしなければならないし、つわりもきつい。なので、大学院の事務局に出向き、進学できないと伝えた所、「Why not?」って。

 

 

光畑: 妊娠して出産していることが何か?って(笑)。

 

 

大崎: そんな人は大勢いるよ。それが何か?って(笑)。

「でも、メディア専攻はすごく大変だから」って言ったら、「うちの大学院には他の専攻科目もあるから」って。

 

 

光畑:日本ならそれこそ、学校側に話したら「しょうがないよね」となりますよね。

 

 

大崎:子どもができて、これから出産とか子育てとかしなきゃいけないから、それにプラスして勉強なんかできない、と思ったんですよね。それを「Why not?」って。

 

 

光畑:妊娠、出産して子どもができたことだけで、女性自身が自分を何もできない、何もかも諦めなきゃいけないって、自分で自分を縛ってしまう。まるで魔法使いの杖で「えい」って呪いをかけられるように思い詰めてしまう。しかも優秀な人ほどそうなるんですよね。それを「何か?」って言ってもらえるってすごいですね。

 

 

大崎:もちろん、勉強はとても大変で、読まなきゃならない資料も多いし、レポートもたくさんあって、とても大変でした。ペーパーが間に合わない!ということもたびたびありました。そんなの時には、「二宮金次郎作戦」を取る訳です。

 

 

光畑:それは…?

 

 

大崎:息子をおんぶして、雪をかき分けかき分け、教授の所に出向く訳です。そうするとその姿を見ただけで教授から「デッドラインを延ばすから」 と(笑)。ひとりひとりの事情に寛容な所がありましたよね。

 

 

光畑:日本だと子育て中は迷惑をかけちゃダメって自分で外堀を作って、壁の中に閉じこもりますよね。周りも声をかけづらい。

 

 

大崎:NYでは何でも自己主張しないと事が進みません。

電話が壊れて修理を依頼すると朝9時から夕方17時の間に行きますって言われちゃう。

しかも、ほとんど来ないし(笑)。

 

窓口の人も「すみません」なんて言わない。たらい回しにするし…。

常に肩肘を張って暮らさないといけないんですが、子連れの母親にはとにかく優しいんですね。

 

こんな事がありました。11月のサンクスギビング(感謝祭)は家族で過ごすホリデーで、皆さん帰省するんですね。その前日の午後は、皆空港に向かうので、いつもに増して激しいタクシー争奪戦が繰り広げられるんです。

そんな中私も、眠ってしまった息子、保育園の大荷物、ベビーカーを抱えてタクシーを拾おうとしてたんですね。

ずっと待っていたら、やっと、目の前でタクシーを降りた人がいたんです。

「私たちを乗せて!」とドライバーに目で合図を送りました。ドライバーもOK、OKと頷いて。

 

ところが、ベビーカーと子どもを抱えてもたもたしていたら、その隙に若い男性がさっとそのタクシーに乗っちゃったんです。

 

本当にがっかりして、また1時間くらいタクシーを待たないとなんて思っていたら、そのタクシーがなかなか発車しないんです。よく見ると、中でドライバーと若い男性が口論しているんです。

ドライバーは「あの子連れの母親を乗せる所だったんだから、降りなさい!」と言っているんですね。

 

 

光畑:ゲットアウト!ですか(笑)。

 

 

大崎:そう「Get out!」って言っているんですね。

その男性も急いでいたんでしょうね。黙ったまま知らん顔して動かない。

 

そのうち道行く人たちも「このタクシーはこの親子が乗るんだ!」って。

さすがにその男性は降り、そのあと周りの人たちに荷物をトランクに入れてもらったりして、無事にタクシーに乗れたんです。

 

 

光畑:シュプレッヒコールですか(笑)。まさか拍手が巻き起こったりして!

 

 

大崎:その通りです(笑)。私も「サンキュー、サンキュー!」なんて手を振って。そのくらいに子連れの母親にサポーティブなんですよね。

タクシーの運転手は、「近頃の若い男はまったくなってない。私たちは子連れの母親をリスペクトして最優先しないといけないのに」と言ってました。

 

 

光畑:子連れの外出に優しいんですね。子育て中の外出を巡っては、ベビーカー論争など、日本ではその是非を巡って議論になっていますね。

その中で気になるのが、子育て中の母を巡る周囲の反応の中に「自分はこうして来たのにできないのはどうか」というような自分とは違う事に対しての反論が多いこと。

 

 

大崎:そうですね。違いを受け入れられないというのか…。

いろんな選択肢があるけど、どれを選択するかは母親の自由。それに対してとやかく言われることはありません。

私の国連の上司は、「私が子育てしていた頃は、どうしても会議に出席しなければならなかったけれど、今はメールもあるしネット会議でもできる。物理的に必ずその人が会議室にいなければならないことはないのよ。できるだけITを利用して、早く帰られるなら帰りなさい」と言われました。

自分の時にはできなかったけど、今はできるんだからって。

 

 

光畑:負の連鎖ではなく、良い連鎖になっているんですね。

 

 

 

男性にこそジェンダーを?!

 

 

光畑:一昔前は女性も社会に出て、そのために勝ち得るようにジェンダーを推進っていう感じでしたが、今の学生の専業主婦志望傾向も出てきて、また違ってきているかと思います。

 

 

大崎:最近の内閣府の調査なんかにも現われていますが、女性は家庭、男性は仕事という分業についての考え方には男女差が出ているように思えます。男子は3割くらいがそう思うという解答なのですが、女子は4割。一昔前とは逆転しているようですね。

男子学生や若い男性と話していると、「専業主婦になりたいなんていう女性とは結婚できませんよ」とか「そもそも、アンケートの選択肢に専業主夫が無いのは不公平だ」なんて言いますよ。

男子の選択肢が少ない。若者の雇用は非正規が中心になってきているので、男性が自分ひとりの収入で家族を支えなければならないなんて、ムリです。

でも、親や女性からそういう重圧を受ける。

経済のグローバル化で、多くの国で、男性だけの収入で家計を支えるのが非常に困難になっています。

 

特に若年層はそうですね。だから、夫婦で働いて、家庭生活を維持する。

そういう風に移行しています。

ところが日本では、根強い「専業主婦幻想」があるんですね。

 

 

光畑:その根本に「働くのがとても大変そう」というのがあるかもしれませんね。

就活も何十社受けてようやく受かるなんて、その間ずっと否定され続けるんですから、精神的に参っちゃいますよね。

 

 

大崎:本当にそうですね。女子の場合、内定をもらって働き始めても、「家事・育児は女性の責任」というジェンダー意識が根強くありますし、制度もそうなっていますから、子育てとの両立にとにかく疲弊してしまう。疲れた先輩、ワーキングマザーをたくさん見ているんでしょうね。

また、昨年、20代の男性の死亡原因のトップが自殺になってしまいました。自殺対策に取り組んでいる人の話を聞くと、就活がうまく行かなかった男子が多いそうです。親に「ごめんなさい」と書き遺して亡くなる若者がいるんです。期待を裏切ってしまってごめんなさい、と。親もそこまでの重圧を与えていたつもりはないから、青天の霹靂のようですね。すごく後悔する。

それから、女性からのプレッシャーも実はあるんですよね。結婚相手の条件として経済力を重視するから。年収300万円未満の男性の未婚率はとても高いです。結婚できるかできないかは、年収300万円を境にハッキリわかれる。

でも今、非正規雇用の平均年収が168万円です。妻と子ども2人を養える目安として年収600万円なんて言われますが、それだけ稼いでいるのは20代後半から30代前半の男性の5%未満と言われてます。しかも、その中で性格も良くて、相性が合う男性に巡り合えるかどうかは、ギャンブルに近い。

男子は正社員になれなければ結婚もできない。将来の展望が描けなくなってしまう。その重圧は女性以上だと思います。

 

 

光畑:そういう優秀な一握りに入りそうな男の子は狙われているということを察知していますね。

そういう男の子ってちゃんとわかっていて、そういう事を当てにして近づいてくる女の子より精神的にも経済的にも自立しようとする子を選ぶんですよね。

 

 

大崎:先日、「男性とジェンダー」というテーマでモンゴル、タイ、ベトナム、カンボジア、フィリピンなどアジア諸国の行政官の人たちと話をする機会があったのですが、若い世代、特に都市部の人たちは男性と女性が共に稼がないと生活が立ち行かないんですね。だから、若い人たちの間では男女とも精神的にも経済的にも自立して対等に、というイコールパートナーを望む傾向が強いそうです。

ところがその感覚が「おじさん世代」には理解できない。いなくなるまで待つかというと、今の政策決定の中枢にいるのはそういう「おじさん」たちなんですね。だから、やはり、時代の変化を理解してもらって未来指向で政策決定してもらわなければ、という議論になりました。

 

 

光畑:それまでじっと待っている、というのも辛いですよね。

 

 

大崎:高度経済成長期は終わった、とハッキリ認識しないといけないですよね。その時代に作られたインフラや税制やあらゆる制度が「男性が稼ぎ手、女性が無償で家事・育児」というジェンダー分業に基づいてつくられています。

よほど思い切った政策転換や公共投資をしないと、結局旧来のシステムに若い男女がどうにか合わせながら生きていくしかなくなる。

何時間もかけて都市部に通勤してくる男性と住宅地で子育てし待っている女性を前提とした交通インフラや都市計画は、共働きファミリーを想定していませんよね。

自宅近くの保育園に預ければ、通勤に時間がかかりますから時短勤務が必要になるし、職場に保育園ができたとしても満員電車で子連れ通勤するのは大変です。

そういうインフラの問題にまで目を向けないと、産みやすく、育てやすく、働きやすい社会を実現するのは難しいだろうなと思います。

 

 

光畑:そんな構造の中では女性は子どもをますます産まなくなるし、育ててにくくなりますよね。

ジェンダーというと女性問題と捉えがちですが、男性にとっても重要な課題なんですよね。

 

 

大崎:男性のジェンダーにももっと注意を払いたいですよね。「

家族を養わなければならない」「男は弱音を吐いてはいけない、常に勝たなければならない」という重圧は大きい。

それは男性の自殺や孤独死の多さに如実に表れています。

 

ジェンダーというのは、社会的な性差を指します。女性らしさ、男性らしさといったイメージ、そしてそのイメージの上に構築された、男女のあるべき姿や振る舞い方、役割、地位。

ホルモンや生殖器官の違いに起因する生物学的な性差とは別のものです。自分の子どもに対しても、男の子だから女の子だからと思ってしまったり、言ってしまったり、期待してしまう。

 

 

光畑:私もときどき講演で呼ばれるのですが、男性はなかなか参加しないですよね。そういう会には…。

 

 

大崎:でも、このところ、私の「ジェンダー論」を受講する男子学生が増えています。動機を聞くと、大きく分けて2つあります。

 

1つ目は、国際社会で将来活躍するには「ジェンダー平等」の知識や心構えが必要だからという理由。

2つめは、自分の男性としてのアイデンティティ、つまり「お前は男らしくない」なんて親に言われている学生が、「いったい男らしさってなんなのか?」ということを問い直したいという理由。

 

後者の学生は、総じてお父さんがマッチョ・タイプのようですね。非常につらい思いをしている。

 

 

光畑:私もついついそういう方にぶれちゃうときがあるんです。だから、時々はその真逆に持って行ってバランスを取るようにしています。

 

 

 

母になることとジェンダーと… 

光畑:ジェンダーと母性というのも噛み合ないと言われてしまいます。

この間も高齢社会についての会合に行った際に、子連れ出勤についてお話ししたところ、母が子どもを連れてでも働いている間、その夫はどうしているのか、平等に子育てを負担していない、とご意見をいただきました。

私は赤ちゃんを連れてでも働ける極端な働き方も受け入れることで、女性がどのような状況にあっても社会参加できるというメッセージを発信している、これが正解ではなく、極端な一例を見せているという説明を差し上げたのですが…。

 

 

大崎:母性については、いろいろな考え方があると思います。ただ「母親ならば母性があって当然」という原理主義的な価値観が母親を苦しめてきたのは事実です。そこは注意したいですね。

子連れ出勤というと、アグネス論争にさかのぼりますが、職場と生活の場が完全に分かれたのは、それこそ産業革命以降です。近代的な工業社会では、職場と再生産(次世代を産み、育む場)の場を分けて、なおかつ男性と女性で分業した方が効率が良かったんですよね。

 

今はそういう経済システムの転換期にありますから、男性も女性も仕事と家庭と地域生活をバランスよくやっていけるような仕組みが必要ですよね。

 

スウェーデンのような北欧諸国は男女平等が伝統的な価値観としてあるんじゃないかと思いがちですが、そうではありません。

グローバル化が進展し、従来の男女分業システムでは国の経済が立ち行かなくなるかも・・・という危機感を持った時に政策転換をして、男女が共に働き、家庭生活を営むような制度を整えたのです。

 

 

光畑:そういう意味ではおっぱいも、女性を子育てに縛り付けているフェミニズム的なものと言われるのですが、おっぱいは女性を楽にする道具だと思うんですよね。

ジェンダーの大御所上野千鶴子先生に先日お会いした時は、この点でもしや怒られるかもなんて緊張していたのですが、これはネオジェンダーだ、と評価をいただきました。

しかも、上野先生、ご自身が代表をされる『WAN』というホームページでも紹介いただいたんです。

 

 

大崎:それはお墨付きをいただきましたね(笑)。

授乳服があれば、どこでも授乳ができる。

子育て中の母親の行動の制限要因を取り除く授乳服は、母親の選択肢を広げるための新しい道具ということですね。

「ネオジェンダー」と言えてしまうかもしれない。これはすごいことですね。

 

 

光畑:実際にモーハウスのファンの皆様の中には「人生が変わった」とおっしゃって頂く方もいらっしゃいます。

1歳くらいで辞めてしまう方が多い中で、ゆっくり授乳期間をとって、しかもとてもアクティブに活動される方が多い

 

 

大崎:WHOやユニセフが2歳までの母乳育児を推奨しているので、国連機関はその指針に従って、2歳未満の子どもを持つ母親が出張する場合は飛行機代とわずかですが日当が出るんです。

在職中に出産した娘は1歳になるまでに中国、タイ、カンボジア、フィリピンと周りましたね。幸い、身体が丈夫だったので。どこの国に行っても、「ベイビー、ベイビー!」とみんなが笑顔になって寄ってくる。

 

 

光畑:発達心理学の先生からもお墨付きをいただいたのですが、子どもにとってもいろいろな反応を小さい頃から受け取れることで、その子のためになっている、と。

 

 

大崎:女性支援プロジェクトを実施している農村地帯でも、子連れだと大歓迎されました。

国連のニューヨーク本部の人が来るなんて言うと、現地の人は距離感を感じて身構えるんですよね。

 

ところが、やって来たのが子連れの母親となると急に心のハードルが下がる。

すっとその場になじめるというか、私の抱っこの仕方が悪いって、こうだっこするんだ、なんて大笑いして娘を抱っこしてくれたり。

和むんですよ。

同じ母親同士として様々な経験談や困っていることやこれからの夢なんかを聴かせてくれて、そこで聴き取ったことをその後の活動やプロジェクトに反映させることができました。

 

 

光畑:子連れの力ってありますよね。

国の新戦力発掘プロジェクト事業の受け入れ事業者として子連れでインターンを受け入れているのですが、この間学会に出展した際、その研修生たちに学会の会場での案内を一緒にしてもらったんです。

日の浅い研修生なので説明などはできないのですが、赤ちゃんを抱っこして働いているだけで和むんですよね。話す事がたくさんできて、特に「良く来てくれたね」とか「すごいね」とほめて頂けるんです。

子連れですみません、ではなく「子連れだからすごいって言われた」という体験ができる。これは子どもだけではなく、母親にとってすごく貴重な体験だと思います。

 

 

大崎:お母さんも変わるけど、子どもの社会に対する信頼感が育まれますよね。

 

 

光畑:隣に座ってあやすと泣いちゃう子どもがいるんですが、やはり色々な人との交流が普段からないと、びっくりしちゃう。

色々な人の中で揉まれることで、母も強くなるけど、子どももいっぱい多様な反応を学び取り社会での許容範囲を広げていると思います。

 

そういう意味で、モーハウスに連れてこられている子どもって、誰に抱っこされても割と大丈夫だったり、社会に対しての信頼性が高い子どもが多いですね。

 

最後に、子育て中の方へのメッセージをいただければ…

 

 

大崎:子育てって、それこそ初めての事ばかりじゃないですか。

私にとっては子どもが一番の先生でした。

息子が3歳のころ、機関車トーマスの知育絵本をいただきました。

時計の読み方がテーマなんですけど、「これ、3時だよね」なんて聞いてきたんですよ。

「この子すごい!もう時計が読める!」と張り切って教え始めてしまって。ところが、3時以外は全然覚えない。

 

私も段々鼻息が荒くなって、声も大きくなって。

 

そうしたら息子が、「ママ、ごめんねー、僕まだ3歳だから3時しかわからないんだ。4歳になったらもっとわかるようになるから、それまで待っててー」と言うんです。

 

ハッと我に返りました。

 

子どもは自分のペースをちゃんと知っているんですね。

 

反省したし、それ以来、子どもの成長のスピードを大切にするというのが私の子育ての基本です。

結局、息子が時計を読めるようになったのは4歳より全然後でしたけどね(笑)。

 

そういう教訓は仕事でも生きてきましたよ。

 

忍耐力と寛容な心(笑)出産と子育ての経験は、私にとってはマイナス経験ではなく、仕事でも自分の人生でも大きなプラスになっていると実感しています。

 

光畑:ありがとうございました。

 

「女の子の幸福論」の出版記念として、著者の大崎麻子さんと光畑のクロストークが2013年10月7日にモーハウス青山ショップにて行われました。

大崎さんは、TBSの番組「サンデーモーニング」のレギュラーとしてもご活躍ですが、ずっとジェンダーに取り組んでいらっしゃり、途上国の女の子たちの支援や国際協力などにもご尽力されています。

『女の子の幸福論』著者 大崎麻子さんとモーハウス光畑が対談しました!

女の子にぜひ読んでほしい事が本当に多くちりばめられていて、女の子がいるご家庭にぜひご紹介したい一冊です。

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