2才1ヶ月の子のママ
カルテ9 「おっぱいへの執着が強くひっきりなしに飲むし離れないのでイライラします」

おっぱいへの執着が強い。何かにつけおっぱい。「なるべくお外に出る時はやめようね」と言っているが精神安定剤的にあげている。
パパも「ほしいんだったらあげれば」と言っている。

1才前後でやめる人がほとんどなのに、家に居るとひっきりなしに飲む。
夜の明け方も離れない。食への興味があまりない。
成長曲線は普通、貧血はない。

 

A: 「1才~2才過ぎまで「心の栄養」として回数が多い。必ず、離れていく日が来ます。ママもお休みを取って無理しないで。」

お子さん、おっぱい大好きなんですね。
2年と1ヶ月、毎日、何回(何十回?)もの授乳、本当におつかれさまです!!!

おいしくて栄養もたっぷりのおっぱいなんじゃないかな、と思いました。

ひっきりなしに飲まれると、いやになることありますよね!!
ずーっと胸に子どもがいて、他の事ができないですし…。

ぜひ、家事は他の人にもやってもらってほしいです。

おっぱいはママしかあげられない、貴重な事業です。
でも、家事は誰でもできるのですから!
ご家族や身内の手を借りられないのであれば、有料ですが、ヘルパーさんやシルバー人材センター、ファミリーサポートセンターのようなところに依頼するのもありだと思います。
ママが食べるご飯も、作ってもらえるといいなと思います。

江戸時代、「乳母」という職業は、高給取りだったそうです。

数十年前、日本で「1才前後におっぱいをやめるべし」という説が流され、今も1才前後でやめる人が多いですが、実は、母乳は何才まで飲ませてもよいのです。
ユニセフとWHOが「授乳しながら補完食で補う、つまり授乳を続けながら食事を進めていく方法=ゴールドスタンダード」を提唱していることからも分かるように、何才までにおっぱいを止めなくてはならないという決まりはありません。(カルテ1参照)

それに2才で授乳しているお子さんは実はたくさんいます。皆、あまり大きな声で言わないので、目立たないだけで。

お子さんは2才1ヶ月とのこと。であれば、これから授乳回数は減ってくると思います。
1才は、歩き出す時期。精神安定剤、「心の栄養」として飲むことが増える時期でもあります。

動けるようになっていろいろ試して冒険し、刺激を受けて心や脳が育つのですが、刺激を受けた後に落ち着きたいときに、ママのおっぱいに戻ってくるのだそうです。
ちょうど、船が大海原を航海し、ときどき、港に戻ってくるように。
ママのおっぱいが、港なのですね。

そうした「心の栄養」として飲む場合、1才~2才過ぎまでが、一番回数が多いと思われます。
これから、少しずつ減ってくると思いますので、安心してくださいね。
子どもが世の中に、少しずつ慣れてくるからです。

しかし、そうは言っても、ずーっと授乳していると、授乳が楽しくなくなってきますよね。
「またー?」と思って、うんざりしてしまったり。子どもがかわいいと感じられなくなってしまったり。
そうなるとつらいので、ぜひ、ママがお休みを取ってください。
家族や友人にお子さんを預けたり、保育園の一時保育に預けたり。
2~3時間でもいいですので、休む時間(育児も家事も仕事もせず、好きなことだけをする時間「ママの休日」)を取りましょう。
365日、24時間体制で働いていたら、いやになるのは当然です。
ちょこちょこ、なんとしても、お休みを取ってくださいね。

どうしてもお休みがとれない場合は、ソフトに授乳回数を減らす方法を試してみてください。

<安心させることで減らす方法>

おっぱいに執着している場合、親が授乳を嫌がると、ますます子どもが執着します。「逃げると、追いたくなる」理屈です。そこでママが休みを取り、元気になったところで、思いきり授乳します。

「さあー、いくら飲んでもいいよ~。」「どんどんお飲み~。」と、ドーンと構えて覚悟を決めて、にこにこと授乳。ママの周囲におにぎりやあたたかい番茶の入ったポットを置いたりして、ママ自身も補給しながら、トイレ以外は授乳する、くらいの勢いで授乳し続けます。そうすると、あら不思議。子どもが安心して、その後、逆に授乳回数が減ったりします。この方法は多くのママが体験しています。騙されたと思ってぜひやってみてください。ただし、本当は止めたいと気付かれたりすると逆効果でおっぱいへの執着がますます増してしまいますから気を付けて。

<他のスキンシップの種類を増やす方法>

具体的には「ママ(パパ)のおひざに乗って絵本を読んでもらう」、「ママとわらべ歌で遊ぶ」、など。
わらべ歌はスキンシップを含む動きが多く、しかも遊びの要素があるので、子どもが喜びます。
絵本もわらべ歌も、子どもの心身の発達にいい影響があるそうなので、一石二鳥ですね。♪(わらべ歌は講座もあるし、ユーチューブで動画を見ることができます。)
電車に乗って出かけるときに、電車の中で絵本やわらべ歌で間を持たせることもできるので、一石三鳥かも。

他にも、意識して、こちらから、「手をつなぐ」「背中をさする」「頭をなでなでする」「ハグする」など、スキンシップを増やします。
「あたたかく見つめる」「優しい言葉かけをする」のもいいです。

おっぱい以外の方法で、子どもが安心できることを増やすのです。そうすると、無理なく、自然におっぱいの回数が減っていきます。

もう一つのご質問に、「食への興味があまりない」とありました。

おっぱいの場合は、先ほど申し上げたように「離乳食」ではなくて「補完食」と言います。(WHO提唱)「母乳が主食で、食べ物は、母乳を補う、付け足していくもの」という考え方です。
おっぱいを吸う動きは「噛む」動きと同じであり、母乳にはママが食べたものから色々な栄養素が入るので、「噛む」練習と、いろいろなものを食べる経験はできています。
だから、「おっぱいを止めることを急がなくてよい」のです。貧血もないということですし、食べる体験として、一口でも食べてくれていたらOK、と言うくらいに考えてみてください。

子どもが食に興味を持つようになる、作戦をお伝えします。

親が、「おいしそうに食べて見せる。」

子どもには、周囲の人をまねる本能があります。だから、言葉を話すようになり、立って歩くようになるのです。
ぜひ、子どもの前でおいしそうに食べてみてください。
そして、子どもが欲しがったら、少しだけ分けてあげる。そうすると、食べるようになります。子どもが自分から手を出して食べてくれたら、最高ですよね。

ただし、無理はしないでください。大人でも、食べたくないときに口に入れられたら、いやになってしまいます。
子どもが、「食事っていやだな」と思うようになるといけないので、食べたがらないときは、口に入れたりしないでくださいね。

お子さんがなかなか離れないとのこと。

もどかしく感じるかもしれないですが、個人差が大きく、お子さんによっては、必ずしも「早く離れること」がよいこととは言えないので・・・。
いっぱいくっつかせてあげて大丈夫です。
必ず、離れていく日が来ます。
充分にくっついていた子ほど、「あんなにくっついていたのに!」とがくぜんとするくらい、あっさりと離れるときが来ます。

ただ、親もくたびれてしまうので、ぜひ、ときどきお休みを取ってくださいね。

相談員 すずきともこ

快適母乳育児生活研究所 上席研究員